農薬入り毒ギョウザの事件について

当事件については,種々の媒体で盛んに報道されているところです。

中国製冷凍ギョーザで食中毒、千葉と兵庫で3家族10人 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
東京新聞:中国製ギョーザに農薬 千葉・兵庫、10人中毒:社会(TOKYO Web)

また,輸入者JTフーズが製品の回収作業を進めています。

冷凍食品の一部回収について

ところで,検出された農薬である『メタミドホス』ですが,日本では禁止されているので,基本的に国内にはありません。しかし,中国では使用可能であり,輸入の際に生鮮野菜等に残留し,水際の検査で違反になったケースもあるようです。参考:厚生労働省:輸入食品監視業務ホームページ

しかしながら,ヒトは害虫に比べて遙かに大きい生物なので,害虫に効果のある濃度であっても,通例使用する濃度であればヒトがそれに暴露されても急性中毒になることはまずありません。よって,今回の事件で,ギョウザを食べた何人もの人に急性中毒の症状が出たということは,相当の濃度(量)がギョウザに含まれていたと推測できます。これはもう殺虫とかの濃度を超えていると考えられ,原材料への農薬の残留よりも,製造過程で,なんらかの理由で直接混入したのではないかと思われます。実際,日本では同類の殺虫剤が家庭用でハエやゴキブリ用で使われていますので,そういったものが工場で使われていて,混入したかもしれません。

輸入者JTフーズは,製品の化学物質の検査は行っていなかったとのことです。しかし,冷凍餃子という商品を考えたとき,事実上農薬を使うのは原材料たる野菜類であり,原材料が残留農薬基準をクリアすれば良いという見方もできます。もちろん,検査は行った方が良いのですが,現実的では無いということです。

いずれにせよ原因は警察が調べていますので置いておいて,メタミドホスを調べてみました。

国際化学物質安全性カード(WHO/IPCS/ILO)-メタミドホス

有機リン系の殺虫剤です。有機リン系の殺虫剤自体は,珍しいものではなく,日本でも低毒性のもの(スミチオン,ジクロルボス等)を中心に農薬として使われてるようです。ちなみに有機リン系で毒ガスに特化したものにサリンがあります。

急性中毒の症状としては,軽症のもので,【食欲不振,悪心,嘔吐,腹痛,下痢,発汗,流涎,胸部圧迫感,倦怠感,頭痛,不安感,めまい】があります。

事件の原因が何かによりますが,また中国からの輸入食品類が敬遠されることになりそうです。